寺院が管理をしている霊園のメリットブログ:13-12-05
「背中を洗ってくれないか」
と、父親に言われた。
この父親というのは、実は嫁の父親である。
ぼくは一瞬戸惑ったが、
「え?!あっ!はいっ」
と言いながらタオルを構え、父親の背中にあてがった。
初めて父親の背中というものに触れた。
なんか丸っこくて大きくて、何だかゴツゴツしている。
上手に洗ってあげようと思えば思うほどうまくいかない。
タオルがねじれてしまう…
今度は父親がぼくの背中を洗ってくれるらしい。
ぼくは静かに父親に背を向ける。
父親は、なんていうか、力加減を知らない。
すごく力強くて、体についている必要なものまで
洗い流されてしまいそうな感じ。
思わずぼくは、身をよじってしまった。
「すまん」父親は申し訳なさそうに、
「息子の背中を洗うのは難しいな」と言った…
ぼくは物心のついたころから、
女手ひとつで育てられてきた。
我が家に父親がいないことを悲しがらなかったのは、
お母さんの育てかたが上手だったからだと思う。
溢れんばかりの愛を注いでくれたので、
ぼくはとても幸せだった。
とは言え
父親のことを思わなかった訳ではない。
ただ、そのときぼくがイメージするものは
どれも好感の持てないものばかりだった。
無口!ガンコ!厳しい!
正直、「父親は怖い」という印象しかなかった。
そんなぼくに父ができたのは、
ぼくが結婚をしたからだ。
嫁の父親は、ぼくにとって不思議な存在だった。
格好なんてつけない。不器用だけどまっすぐ。褒められると照れ隠しする。
大きなお世話なことばかりする…
ぼくは、父親というものに対する印象が
まるっきり変わった。